Kantabileさんの日常

某大学に所属する大学生のゆるふわな毎日。日本語ラップやMCバトルについての解説記事。その他自分の好きなことを発信してます。

「ラスボス 般若」は我々に何を残したのか?

ついに彼はいなくなってしまうのであろうか。

 

先日の記事で ラスボスが般若でいなくなるということは ごく自然なことであると 書いたがやはりどうしても体が受け付けないという部分はあるのかもしれない。

 

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どうせ、感動するということは分かっていた。おそらく熱い勝負を繰り広げた末に自分はバトルのすさまじい光景の前に涙してしまうのかもしれない。そんな覚悟をラストにたいしてもったうえで画面の前の憧れ同士の対決に向けて胸を高ぶらせていた。

 

おそらく、目の前にいる自分のヒーローたちはあつい火花をバチバチとあげたうえで、私たちの視覚と鼓膜に花火大会のような衝撃を残してくれるのだろう。熱狂したうえでの涙を流す。そんな風に思っていた。

 

 

 

しかし、彼らのバトルはリスペクトをこめたうえでの讃えあいであり、花火大会ではなく静かに燃える青い炎を見せてくれた。

 

 

 

彼ら二人においてのバトルは「ないもの」がテーマであった。

 

般若という人物は本当に強さを見せる人間だった。背中で語る男、まさにそれだった。

確かに我々から見ても完全無欠な人間といったわけではない。バトルの冒頭で般若が言っていた通り、スキルは足りないのかもしれない。しかし、それをしのぐほどの経験と熱さ、そして何よりラスボスとしてふさわしい性格と、風格をまとっている人物だった。

 

では、そんな彼が「足りない」と思っていたのはなんであろうか。

 

 

番組冒頭で般若のこれまでのMCバトル史が上がっていたが、まさに彼は熱く、全てにおいて全力で戦う人物だった。2002-3年のB-BOY PARKでは、バトルが終わった後でもリアル喧嘩になるほどのイケイケな男だった。しかし、その裏にはいじめの経験などといった闇が潜んでいる。いや、その闇があるから熱さがあるのか。

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次第に彼の様々な姿勢での熱さは結果へと必然的に昇華していった。アルバムを次々とリリースし、彼は自分自身の弱さ、面白さ、強さをすべて曲にした。特にアルバム「根こそぎ」彼の全てが詰まっているアルバムだろう。

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そのようなアルバム制作活動を経た後に2008年にUMBでの優勝という結果を生み出し、その後も精力的に音源制作、ライブを次々と行った。そのような活動を続けていたところにフリースタイルダンジョンのラスボスのオファーが。

 

 

ラスボスとしての活動を続けていくことによって、彼自身も様々なところで自分のタフさが増えていっていることは感じたのだろう。一方で、それまでの自分が抱えていた弱さをすべてにおいて強みへと変換してきた彼にとっては、全ての要素が強さに変わっていることに違和感を感じたのかもしれない。

よく聞け お前にないのはタフさ

よく聞け 俺にないのは弱さ。

よく聞け 内面そのメンタル 

お前にラスボスからの伝達

 フリースタイルダンジョン般若vsR指定 Round3より)

 

そう。彼自身は私たちの目から見えない「弱みがないという弱み」に直面していたのかもしれない。

 

 

 

一方のR指定はというと。

その後バースで、彼自身がバース中に噛んでしまったことによって、自分の弱さをバトル途中に感じる。そして、そんな弱さを強みに変えなければいけないと。

まさに、それを体現している般若、そしてそのような自分の姿をさらけだせる信頼できるボス相手だからこそ出た言葉だろう。

 

というのも、新ラスボスR指定は般若との違いがたくさんある。

 

たしかに、彼自身も中高時代に目立たない人物であったことは音源・ラジオなどで話している。般若と同様であった。しかし、彼は般若のように弱さを解消するのではなくうまく、弱さそのままに強さに変えて戦ってきたのだ。

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おそらく、そのような弱さをそのままに、そしてむき出しに戦うことは相当な勇気がいることだっただろう。それを補うのが大好きなHIPHOPとそれに裏打ちされたスキルであった。

 

スキルに自信がないが、それ以上にどんな苦境も乗り越えてきた東京のち〇かす

 

スキルで自分を高め、弱さをそのまま武器にした大阪のHIPHOPオタク。

 

きっと、フリースタイルダンジョンはこれまでこの二人の対極的な壁が存在したから人気を保ってきたのであろう。また、そのような二人でもフリースタイルダンジョンという看板を背負うものできっとシンパシーを感じていたのでは。

 

そんな部分が様々な箇所からにじみ出ている試合であった。

 

二人の戦っている姿、スタンスは全く持って真反対であるにも関わらず、会話のキャッチボールを続けている姿を見るとバトルの意味を改めて考えさせられるいい機会をいただいたように思えた。

 

個人的には2Rが終わった時点で判定を決めないでほしいという考えが出てきた中で判定を決めるのは野暮であると決めたZeebra氏にはリスペクトを送りたい。

 

そんな二人のバトルは様々な人に様々なものを与えているようだ。

 

 

などと様々な意見がラッパーからでているが。

 

自分としては番組での般若の立ち振る舞いから

「もう俺は十分やったからあとはこの天才に任せよう」

という確固たる意志を感じた。

 

そして、その思いにR指定も涙を流しそうになりながらも自分の強さであるスキルで抵抗しようという姿勢にはこちらも感動した。

 

弱さを強さに変えてきた彼だからこそはける正直な言葉に、自分も弱さと向き合うことをしなければいけないという意識を持たされハッとした。だから、感動を通り越していた。

 

バトル後の般若の視線は何を見据えていたのか。また、このバトルを通して般若がR指定、モンスターそして我々視聴者に何を伝えようとしていたのか。考えてほしい。

 

ありがとう般若。もうバトルには戻ってこなくていいから。安心してください。

youtu.be

 

以上。